クォン・デ
今日現在、森達也さんのWebのコラムに以下のような文章が載っている。
自身の書籍で好きな作品は?とよく訊かれる。そのたびに考え込む。もしかしたらそのときによって答えは違うかもしれない。でも「クォン・デ」は間違いなく、思い入れがとてもある作品だ。
ところが売れない。悔しく、そして悲しい。単行本も文庫も初版で終わり。読んだ方からは「傑作だ」とよく言われるのだけど、流通していないのだからどうしようもない。版元である角川書店からは、今のところ重版の予定はないと連絡を受けた。つまりこのままでは絶版になる。 身も蓋もないことを書くけれど、自分がもっと著名な作家なら、とつくづく思う。
少なくとも「クォン・デ」については、(もしも重版してもらえるなら)印税はなくてもいい。できることなら無料で配布したいくらい。一人でも多くの人に読んでほしい。クォン・デについて知ってほしい。
2010.09.8. 森達也
そういえば私も持っているがまだ読んでいない。
ここまで森さんがおっしゃるのだからと読んでみることにした。*1
ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー | |
森 達也 おすすめ平均 秀逸だけど自虐的 こんな 番組見てみたい! 革命気分に流された深窓の王子。 何かが・・・ 死ぬまで、そして死んでも孤独な男の生涯 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
内容(「BOOK」データベースより)
1951年、杉並区の粗末な貸家で孤独に息絶えた老人・クォン・デ。彼はフランス植民地支配からの祖国解放運動のため、45年前に来日したベトナムの王子であった。母国では伝説的カリスマであった彼が、その後なぜ一度も帰郷できず、漂泊の日々を送らねばならなかったのか…。満州国皇帝溥儀を担ぎ出した大東亜共栄圏思想が生んだ昭和史の裏ミステリーを、映画界の奇才が鮮やかにドキュメント。
随所に森さん自身が顔を出し、それが読み手には森さんらしいと感じるか、ウザいと感じるか。
もっとこの本をメジャーにさせなかったのは森さんの個性のせいじゃないかなぁ。
ドキュメンタリーというのは最終的に書き手が伝えたい方向へリードするにせよ、
あまりストレートに書きすぎない方が良いと捉える人が多いと思う。
事実を書いてもらえれば良いというか。
私は森さんの感覚が好きなので救いようがない辛い話ではあるが、この本に出会えて良かったと思う。
空港で来る日も来る日も飛行機を待っていたなんて想像したくもないほど切ない姿で、
「泣きたいから観に来たー」なんて言ってるような映画が大好きな巷の娘さん達、
この本を読めば間違いなく泣けます。死んじゃうから泣けるんじゃないけどね。
*1:私が買ったのは文庫本ですが、そっちは在庫無しだったので単行本の方で紹介してます。